サルマ―冬の喜びを包むもの

05.04.2018

サルマは、私たちの多くが愛する伝統的な食べ物です。このサルマは冬の時期に作られる料理で、非常に美味しく、そして人々に熱愛されています。この料理は、作り方に多少の違いはあるものの、南東ヨーロッパ全域や中東の一部地域で見られるものです。

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調理の過程で詰め物をしたり、巻いたりする作業を伴う郷土料理の多くがそうであるように、サルマはかつて存在したオスマン帝国発祥の料理です。オスマン帝国の食文化の影響は、上述のすべての領域において現在でも色濃く残っています。「サルマ」という単語そのものが、トルコ語起源の言葉です。今日、サルマはクロアチア料理の一つとして定着しています。また、誰もがサルマに対して強い愛着を抱き、サルマは年度の変わり目に食卓に上る究極の家庭料理となっています。実際、サルマは冬の風物詩の一つであり、最後のサルマを温めなおして食べる時に、事実上冬が終わるといっても過言ではないでしょう。

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サルマの作り方そのものはそれほど難しいものではありません。しかし、サルマを調理する際には、非常に手間がかかり、経験を要するうえに、ちょっとしたコツがあります。基本的には、ひき肉(たいていの場合は豚と子牛の合いびき肉、あるいは豚ひき肉か子牛のひき肉のどちらかだけを使用します)に米、タマネギ、ニンニク、ベーコンそして香辛料を加えて作った肉ダネを酢漬けにしたキャベツの葉で巻き、そしてそれを水が入った鍋に入れて、肉ダネを巻くときに残った酢漬けキャベツの切れ端と一緒にとろ火でじっくりと煮込みます。サルマが完成するころには、肉ダネが巻かれたキャベツは水分を含んで膨張し、またその煮汁は、酢漬けキャベツ、肉や香辛料の味が混じり合い、何とも言えない食欲を刺激する香りを発するようになります。通常、サルマはマッシュポテトを添えて食卓に出されますが、時間がないときには、手間をかけずにパンとともに供されます(トウモロコシの粉から作られたパンと一緒に食べると、非常に美味しいです)。

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クロアチアの日常生活においては、サルマが必ず出される特別な場面が2度あります。第一の場面は、新年とその後の数日間の時期に訪れます。新年を盛大に祝う直前に、お母さんやおばあちゃんは手を休めることなく、大鍋数個分もの大量のサルマを作り、年始の数日間保存しておきます。いうまでもなく、祝日に何度も乾杯をした後に料理をしたいと思う人など一人もいません。また、もう一つ重要なことは、ロールキャベツが浸されている酢漬けキャベツの成分が大量に溶けだした煮汁は二日酔いを治す特効薬であるという事実です。宴会でお酒をたくさん飲んだ後に食べるサルマは、本当に体を癒してくれます。サルマの更なる魅力は、理由ははっきりしないものの、もともと入れられていた鍋で温めなおすと、実際に温めなおす前よりも美味しくなることです。作ってから2日目が一番の食べごろだと主張する人もいますが、調理してから3日後のものが一番美味しいと断言する人もいます。心配しないでください、サルマがまだ残っていれば、皆様は嬉しい気持ちになり、それを美味しくいただくことができるでしょう。

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今一つの特別な場面は、家族そろってオーストリアやスロヴェニア、あるいはイタリアなどクロアチアに隣接するアルプス山脈沿いの国へとスキー休暇に出かける時に訪れます。クロアチアでは、その際にサルマをポットに入れて出かけるという古い習慣があり、それにまつわる逸話は数多く存在します。もちろん、サルマのにおいは長期間車の中に残ります。しかし、家族の誰もが、栄養豊富で慣れ親しんだ料理を数日間休暇先でも食べられることに幸せを感じています。クロアチアがEUに加盟する以前の時期には、サルマのような食べ物を国外へと持ち出すことは、実際には禁止されていました。そのため、人々は様々な工夫を凝らした方法でサルマをクロアチアの領域外に持ち込んでいました。確かに、この習慣は時代が下るにつれて廃れていきました。しかし、今後も多くの人々が私たちにとってスキーをした後には欠かすことのできない備品、言い換えれば、サルマが入った貴重なポットを車のトランクに入れて出かけることでしょう。

一番美味しいサルマは、間違いなく家庭で愛情を込めて丹念に作られたものです。しかし、皆様が家庭で調理されたサルマを食べる機会に恵まれなかったとしても、がっかりする必要はありません。ザグレブにあるほぼすべての伝統的な料理を出す食堂では、冬の時期に一定期間ないしは数日の間サルマがメニューに掲載されることになっています。もちろん、どの店のサルマが一番美味しいかは人によって意見が分かれるでしょう。というのも、そのことは多くの人々にとってとても重要な問題であるからです。美味しいサルマを堪能できるお店として自信を持ってお奨めできるのは、プルゲル、スタリ・フィヤケル、コド・シーメ、ムリナリツァ、コド・ペレです。また、これらの店以外にも、美味しいサルマを出す食堂は数多く存在します。今年の降臨祭期間中に出店した料理を提供する屋台の中で、最大限の売り上げを記録したT&Tのサルマはぜひ食べに行く価値があります。ここで出されるサルマは、他の場所で出されるものとは異なり、サンドイッチにされて提供されます。いずれにせよ、私は、皆様がご自身の味覚に合ったサルマを食べることができると確信しています。そして、ここでご紹介した場所以外にも、皆さんが美味しいと思うサルマを出すお店があるかもしれないので、ぜひご自身で市内へと出かけ、好みのサルマを見つけてください。新年明けましておめでとうございます、そして皆様が美味しいサルマを食べられますように!